20年ぶりに将棋を再開したオヤジのブログ

将棋ウォーズでやっと初段になったんですぅ

書評

「リボーンの棋士」めっちゃ面白いので死ぬ前に絶対読め!

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リボーンの棋士第一巻表紙(羽生善治氏コメント付き)

リボーンの棋士 鍋倉夫/小学館

「リボーンの棋士」である。
ふざけたタイトルであることと(リボンの騎士のパロディ?オマージュ?としてはあまりにもお粗末なんじゃね?と思った)、表紙の絵柄があまりタイプではなく主人公と思しき人物が軽そうに見えるので、将棋マンガとは知っていたのだがあまり興味がなかったのである。

しかし結論である。

絶対に読め!死ぬ前に読め!

月並みな表現ではこの気持ちを表現できないので、こんなお勧めになってしまうわけだ。
ちなみに将棋を題材とするマンガではあるが、楽しむために将棋の知識がなくても全く問題ない。このあたりは大昔に一世を風靡した5五の竜などとはちょっと異なる。スポーツマンガのほとんどはそのスポーツを知らなくても問題なく楽しめるが、それと全く一緒である。

さて、リボーンの棋士であるがリアリティがまずすごい。
長年にわたって将棋界をリードしているトッププロ羽生善治氏が帯コメントを寄せている。

「この作品から将棋界の奥深さを感じてもらえたら嬉しいです。」

とのことである。
トッププロをしてこのようなコメントが寄せられる程のリアリティである。

ではストーリーである。
プロ棋士養成機関である奨励会を年齢制限で強制的に退会させられプロへの道を断たれた主人公の安住。
全国こども将棋名人戦(おそらくは現実にはプロ棋士の登竜門である小学生名人戦のことを指していると思われる)に優勝し、類まれなる才能を嘱望されていたのが彼である。

しかし、結局はプロである四段に年齢制限である26歳までに昇格することができず、29歳の現在ではカラオケ店でアルバイトの仕事についている。
三段から昇段することができずプロへの道を断たれた話は実際に枚挙にいとまがない。

奨励会に入るだけでもとてもとてもすごいことなのだ。
奨励会の最低ランクは六級であるが、この最低クラスでもアマチュアの三段程度の棋力に相当する。
三段というと将棋道場の常連では最強クラス、市の将棋大会では優勝できる可能性があるぐらいの実力だ。
それでやっと奨励会に入会が許され、六級程度から始まり三段まで昇格しリーグ戦を勝ち抜いてようやくプロの資格である四段にたどり着くのが将棋のプロの道。
天才達がしのぎを削り、更にその中の一握りがプロになるという厳しい厳しい世界である。

主人公の安住はプロである一歩手前である三段までたどり着きながらの挫折である。
天才でありながらも将棋しかなかった主人公には未来が見えない。
大学生アルバイトからもバカにされながら将棋にはもう触れることのない3年間を送る。

しかし、やはり将棋は自分の一部であったことに改めて気が付き、楽しみのために将棋を再開する。ここにアマチュア棋士として安住が再度誕生(リボーン)するというストーリーだ。

プロになるという目的がない中でも、将棋が好きだったという奨励会に入る前に回帰して、楽しみのために将棋に打ち込む姿がすがすがしく実に爽快である。
イベントでたまたま抽選であたった新進のトッププロとの指導対局でも、純粋に楽しむ気持ちで指して勝利するという奇跡を起こす。

リボーンの棋士 主人公安住の回想と明星プロとの対局

安住が将棋の楽しさを思い出すシーン

このトッププロの明星六段は奇しくも、奨励会でこの勝負で負けたら引退確定という時にあたった後輩であった。勝ったシーンは思わず目頭が熱くなりそうなほど感動である。

リボーンの棋士に登場する人物たちはまたみな湿り気を帯びていて、これがまた切なくてとてもいい。

やはり元奨励会員でプロになることができなかった土屋。
食品の製造工場で生きる目的を見つけることができずに死んだように生きている。

東大を卒業し総合商社のエリートサラリーマンであるにもかかわらず、アマ三冠、そしてプロ相手にも5割の勝率を上げている片桐。
本当はプロ棋士になりたかったにもかかわらず、父の無理解によって奨励会に入ることができなかったため、奨励会員に対して敵意をひそかに抱いている人物。

これらの人物たちにも生き生きと血が通っていて一緒に切ない気分になる。

大事なことなのでもう一度書くのだ。

絶対に読め!死ぬ前に読め!

なのである。

ひょっとしたら、これを読んだら将棋について興味がわくかもしれない。

将棋の奥深さを表す「リボーンの棋士」の一ページ

この表現はうまく将棋の難しさ、面白さを言い表していると思う。自分はたかだかアマチュアの初段ぐらいなので将棋の何たるかなんてものは全く分かっていないのであるが、真の面白さはようやく最近少しわかってきたように思う。

「将棋盤なんてあんなに小さいんだから簡単に見渡せるじゃん!」

って思われそうだが、将棋の駒は40枚ある。
将棋の駒が2枚あればその間に相互作用が起こる可能性がある。4枚の駒があれば、4通りの相互作用がありうる。いわんや40枚の駒があったら無限と言えるほどの相互作用がそこにありうる。
自分が駒を1つ動かすことによって、全体がガラッと変わるのである。
その駒同士の相互作用の可能性は無限大に近い。無限大の空間を俯瞰して、どれが最善の着手なのか?を必死にとらえようとしている比喩である。

すげーなー、これ。って思ったわけである。

話は全く変わって、特筆すべきが監修をしているのが現在将棋講師をしている鈴木肇氏である(棋譜の監修だけかもしれないが)。
鈴木肇氏は主人公の安住と同じく、奨励会で三段まで昇段しながらも惜しくもプロになることができなかった俊才である。
産経ニュースから引用するのである。

鈴木さんが羽生善治棋聖(47)=竜王=に憧れて奨励会に入ったのは中学3年のとき。昇級、昇段を重ね、22歳で三段リーグに初めて参加した。年2回開催され、プロになれるのは原則として上位2人だ。1回目の三段リーグは前半、好調な滑り出しで「このままいけるんじゃないか」。だが後半は負けが続き、五分の成績だった。

2回目以降も負け越しが続き、「将棋が怖くなってしまった」。結局、奨励会を突破できず退会が決まると、帰りの電車で涙があふれた。中学から将棋一筋だっただけに、「プロになれず親に申し訳なかった」という。

退会後は将棋を見るのも嫌だった。飲食店でアルバイトを始めた頃、地元、神奈川の将棋関係者から「教室をやってみないか」。教えるのが好きなこともあり、一念発起。4年前に生徒1人で出発し、評判は口コミで広がった。 中学や高校の部活動でも教える多忙な日々だ。「ブームのおかげですね。子供が将棋を好きになってくれるのがうれしい」と笑顔で話す。

合宿に講師で参加した佐々木勇気六段(23)は「奨励会を退会して苦労を知っているので、その分楽しさを伝えたいという思いが強いのでは」と語る。
これから教室を増やしていくつもりだ。一過性のブームでは終わらせたくない。「奨励会の頃は将棋が楽しくなかった。でも、やっぱり好きなんですよ。習ってよかった、と思ってくれる先生になりたい」

引用が長くなってしまったがまさしく鈴木氏は主人公の安住のモデルのような人物である。
(三段で奨励会を退会した人はこういう人生が多いのかもしれないが・・・)

私は実は鈴木氏に指導対局を受けたことがある。
物腰が柔らかく、かつ目線を低くしてくれる方である。また、語り口がすごく楽しい。
当然のことながらプロになっていてもおかしくないほどの実力なので、頭の中に詰め込まれている棋譜の量が半端じゃない(まあ、当たり前なんでしょうけどね)。私が指導対局を受けたときに20手ぐらいで(涙)あっさりつぶれたときに、

「この局面は2002年(だったかな)に〇〇先生の対局で実際にありました。」

みたいな、すげーーー。って当たり前のことながらしびれた次第である。
過去の快勝譜の解説も聞いたのだが、このレベルになると棋譜として表れているのは本当に氷山の一角で、水面下では膨大な駆け引きがされているのだなあと感動したものである。

はじめしょうぎ教室という将棋の教室を横浜のY.Y.world囲碁・将棋という将棋囲碁道場でやっているそうなのだが、近くだったら通いたくって仕方がない。一回3,000円である。安い!近くだったら通っちゃう!って思う。

なんだかリボーンの棋士のレビューなのか、鈴木肇氏の紹介なのかよくわからない記事になってしまったが、とにかく第二巻が発売されるのが楽しみである。

刮目して待て!

なのである。

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